「hibi」が第29回愛知まちなみ建築賞(2021年度)を受賞しました

目次

山を楽しむ複合施設 「hibi」(川辺と道の窓をもつ家)

もともと雑貨屋さんだった空き家を、一般財団法人古橋会が引き継いで、古橋会は物件所有者の立場から、「自転車の宿場町」というコンセプトでリノベーションしました。
かつて中馬街道(現在の国道153号線)の木橋があったとされる場所で、100年以上地域の玄関口になってきた建物です。
愛知県豊田市の中山間地域である稲武にて、本格的なリノベーションを行った画期的な事例です。

「hibi」では、家具工房『first-hand』が、宿泊業(民泊)と木工房を手掛けています。
「泊まれる家具屋」として自然豊かな稲武を満喫していただくことができます。

  • 営業のお知らせ(first-hand)
お部屋やご予約、営業日、営業時間、ワークショップ、冬季休業期間などは、お店のページからご確認ください。
©first-hand 2021
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「川辺と道の窓をもつ家」第29回愛知まちなみ建築賞 受賞!

愛知まちなみ建築賞」は、良好なまちなみ景観の形成や、潤いのあるまちづくりに寄与するなど、良好な地域環境の形成に貢献していると認められる建築物や、まちなみを表彰することにより、建築物及びまちなみのまちづくりに果たす意義や役割を啓発し、魅力と潤いのある地域の形成を図ることを目的として、「愛知まちなみ建築賞」を1993年度から毎年実施されています。

主催:愛知県
後援:愛知県市長会ほか
協賛:(公社)愛知建築士会ほか

第29回(2021年度)の本年は8作品が受賞し、企業や自治体の建物も並ぶなかで、hibi(川辺と道の窓をもつ家)も受賞いたしました。

第29回愛知まちなみ建築賞(2021年度)

ART DIRECTION+DESIGN 高柳 新・岡村 香(CAMP inc.)(愛知県HPより)
第29回愛知まちなみ建築賞(2021年度)受賞作品(愛知県HPより)

第29回愛知まちなみ建築賞(2021年度)の詳しい内容は、こちらの愛知県公園緑地課「第29回愛知まちなみ建築賞の受賞作品について」をご覧ください。

また、とても素敵な『第29回愛知まちなみ建築賞表彰作品集 2021(PDF)』も是非ご覧ください。

愛知県報道発表

講評内容 hibi(川辺と道の窓をもつ家)

建築主:一般財団法人古橋会
設計者:TUNA Architects
施工者:誠和建設株式会社
    first-hand
概要
 主要用途:住宅
 構造:木造 地上3階

講評:選考委員 澤村喜久夫様(愛知まちなみ建築賞ページから引用)

 稲武町は江戸時代から明治時代にかけて中馬街道の中継地として栄え、今も風情のある古いまちなみが残されている。築100年をこえる木造3階建てで、かつては商店だった空き家を、住居・ゲストハウス・家具工房にリノベーションした作品である。

 敷地は名倉川に架かる旧稲武大橋のたもとにあり、家屋は道路と高低差のある川辺の地盤に建つ。正面入り口は2階のレベルにあり、通りからは2階建てに見える。屋根は切妻平入、軒先は通りに沿って建ち並ぶ家屋の軒に揃う。正面を引き違いサッシとし、往時と同様に通りに開いたファサードはまちなみに調和し、地域の特色ある景観を伝えている。

 西妻面では川辺に面して大きなサッシを設け、川辺の銀杏の木や鉄骨アーチ橋の美しい風景を建物に取り込んでいる。南側の通りに面する窓に加え、西妻側にも窓を設けたことで、木橋跡の石積み、人馬改め所跡などを往時の目線で見ることができる。

 リノベーションはこの建物が持つ歴史と向きあうことであると同時に、この地域の過去の風土・文化を今に繋げてくれる。この施設が地域に住まう人とこの地を訪れる人を結び、地域文化の継承に繋がる拠点の一つとなることを期待したい。

表彰式

令和4年2月2日に、愛知県庁本庁舎正庁にて開催されました。
大村秀章愛知県知事より木製の表彰状を授与いただき、設計者であるTUNA Architects(ツナアーキテクツ)の森友宏さんと記念撮影を行いました。
※記念撮影時のみマスクを外しています。

大村秀章知事を中心に、左は森友宏さん、右は(一財)古橋会の古橋真人
会場の作品紹介パネルの前で記念撮影

練り込み技法を用いた作品を制作されている陶芸家の水野教雄様(瀬戸市指定無形文化財「陶芸練り込み」 保持者認定)の記念銘板もいただきました。

設計者「TUNA Architects(ツナアーキテクツ)」

アトリエ系設計事務所出身の森友宏(もり ともひろ)さんと、元豊田市役所公共建築課の鈴木裕太(すずき ゆうた)さんによる建築設計事務所です。
愛知県瀬戸市を拠点に、企画では土地や物件の利活用、設計では住宅から店舗、オフィスビルまで幅広く提案することができます。

一般財団法人古橋会(常務理事 古橋真人)より

hibi(川辺と道の窓をもつ家)は、第32回すまいる愛知住宅賞のUR都市機構中部支社長賞に引き続いて、名誉ある賞をいただき大変光栄です。
ご協力いただいた皆様に改めて感謝いたします。
リノベーション工事に至るまでの経緯や、ご協力いただいた方々のご紹介は、以下の記事をご覧ください。

中山間地域でリノベーションを行う理由は、アート活動を行う心意気

なぜ中山間地域の空き家でリノベーションを行うのかと考えてみると、「単なる経済活動の枠にとどまらない、アート活動を行う心意気」が答えになると思います。

リノベーション事業は当然ながら不動産事業という側面があります。一般財団法人古橋会のような物件所有者目線から見ると、賃貸や売却による収益は不可欠です。
とはいえ、不動産事業という経済活動だけを見ると、家賃や価格、間取り、駅からの距離、学区など、単なるスペック勝負になってしまい、収益性の高い物件しか供給されることはありません。

土地の価格については、中山間地域は都市部の10分の1以下ということも珍しくないですが、建物の建設費やリノベーション費は、中山間地域も都市部も大差ありません。このため、出口の家賃や売却価格と、リノベーションのコストが釣り合わなくなります。
中山間地域の空き家というのは、経済的なインセンティブの枠外にある存在と言えます。

大仰なことを申し上げて恐縮ですが、現在の日本が、どこの地域に行っても同じような町並みで、同じような集合住宅や戸建分譲住宅が建ち並んでいる状況になったのは、供給側(発注者・施主や施工者)も需要側(賃借人や購入者)も、価格と利便性だけをあまりに追求し過ぎた結果だと、私は思います。
その地域や町にもともとあった歴史やストーリー、素材、人の暮らし、風土よりも、大規模に規格化してコストを下げることや、コスパの良い買い物を優先してきたのです。

そうした経済的な努力を否定はいたしません。豊かで便利な暮らしは尊いものです。
しかし、そうした経済的な努力しか眼中に無い生産・消費活動だけになってしまうと、私ども一般財団法人古橋会やhibi(川辺と道の窓をもつ家)がある稲武地域のような中山間地域は選好されず、これからも人口減少が続いていってしまいます。

冒頭で申し上げたアート活動を行う心意気とは、ここでは、中山間地域というフロンティアで新しい価値を作り出す心意気と言えます。つまり、中山間地域のリノベーション物件はアート作品でもあるのです。

スペックやコスパだけで意思決定をするのは、誰にでも分かりやすく訴求力があり、コミュニケーションコストが低く、大きな組織になればなるほど甘美なものです。大量生産・大量流通・大量消費型のマスな経済では、権利と義務、コスト・リスク・リターンを厳然と区別して、ムラ社会な気風や恣意性を排除した取引が好まれます。
大きな組織が大きな売上を上げ、消費者が安く良いものを安定して手に入れるためには、規格化は避けられないのです。

しかし、中山間地域や、今回のhibi(川辺と道の窓をもつ家)は、関係者の顔が見える規模で、第32回すまいる愛知住宅賞で北川啓介先生にご講評いただいた通り、祭礼に似た営みによって成り立っている側面もあります。
祭礼に似た営みでは、属人的であるがゆえに個性や思いが実現でき、非合理的であるがゆえに中山間地域でも実現できるのです。そして、ここにもまた別の尊さがあります。マスな経済では見落とされがちな、人間性や社会性といったものかもしれません。

この高度に発達した資本主義経済と、行政や業界のルールがムラなく一様に適用される現代で、実際に、祭礼に似た営みを、経済性をもバランスを取りながら遂行していくのは、本当に難しい活動でもあります。
今回、第32回すまいる愛知住宅賞に引き続き、第29回愛知まちなみ建築賞でもご評価いただいたことは、とても励みになります。

「建築活動」の領域が、個別の建物から、地域の魅力を高め、地域のストーリーを守り伝えるところまで広がりつつあると改めて感じました。良き社会をつくるフロンティアが、中山間地域にもあるということを、少しでも多くの方に知っていただきたいです。

hibi(川辺と道の窓をもつ家)の写真

©first-hand 2021
©first-hand 2021
©first-hand 2021
©first-hand 2021

この写真は、hibiがオープンしたときのオープニングイベントです。
写真の右から、first-handの松島周平さん、マイクを持っているのがTUNA Architectsの森友宏さん、次に一般財団法人古橋会常務理事の古橋真人、一番左がTUNA Architectsの鈴木裕太さんです。

©first-hand 2021
©first-hand 2021

稲武は「自転車の宿場町」を目指して、マウンテンバイクツーリズムが盛んになってきました。
hibiの詳しい営業情報などは、first-handのHP以外に、Instagram(@firsthand_hitotoki)Instagram(@hitotokitommy)でも素敵な写真を見ることができます。カフェヒトトキも合わせて、是非稲武にお越しください!

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この記事を書いた人

私たちは、300年以上の歴史がある豪農古橋家の歴史と家訓「家は徳に栄える」を受け継ぐ財団法人です。
私たちは、豪農旧家、中山間地域、歴史や伝統文化など、古めかしくて時代遅れとみなされたものを、現代においても通用する形に磨き上げて、人と人との繋がりが人を支え、人間性に根ざした、与え合う社会の実現に貢献していきます。

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