養蚕と製糸– 絹の伝統文化継承 –

「大切なものを、大切にして守る」ことが難しい時代に、
私たちは、豊田市稲武町の絹の伝統文化の継承に尽力しています。

神宮献糸(けんし) -愛知県豊田市稲武は絹のトップブランド-

三河の赤引糸

古来より三河地方は気候風土が養蚕に適していました。
三河産の生糸は、赤引糸(あかひきのいと)と呼ばれ、平安時代から重要な祭祀で用いられてきました。

羽田野敬雄より『参河国養蚕由来記(三河蚕糸考)』を授けられた古橋源六郎暉皃(てるのり)は、明治の殖産興業として、稲武地域の各村に桑苗を配布して、養蚕業を奨励しました。

明治15年から1年も欠かさず今も続く
「伊勢神宮献糸」

古橋源六郎暉皃は、室町時代後期から途絶えていた三河地方からの伊勢神宮献糸(けんし)を、明治15年(1882)に復興させます。
それ以来、稲武からは200匁(750g)の生糸を今も毎年献納しています。

伊勢神宮では、この糸を神御衣祭(かんみそさい)のための和妙(にぎたえ)にされています。

令和から始まった「熱田神宮献糸」

令和元年(2019)から熱田神宮への献糸も始まりました。
熱田神宮では、この糸を御衣祭(おんぞさい)のための和妙(にぎたえ)にされています。

明治期に熱田神宮の大宮司を長年務めた角田忠行は古橋家と親交が深く、明治33年(1900)に開催された古橋源六郎暉皃の頌徳碑(大井平公園石碑)の除幕式では、祭主をしていただいています。

大嘗祭(だいじょうさい)の繒服(にぎたえ)調進

大正度の大嘗祭

天皇陛下が御即位された後、最初に行われる新嘗祭を特別に大嘗祭と呼び、皇位継承に際して行う最も重要な祭祀とされています。

新穀の他に、麁服(あらたえ)という麻織物と、繒服(にぎたえ)という絹織物が、大嘗宮の悠紀殿(ゆきでん)と主基殿(すきでん)に供えられます。

延喜式などの平安期書物には、繒服は三河の国から調進することと記載されていて、稲武からは繒服のための繭を調進しました。

平成度の大嘗祭

当時の稲武町役場が、町を挙げて対応し、繒服を調進しました。

戦後初の大嘗祭であったため、様々な思想が渦巻き、妨害や脅迫の危険にさらされ、厳戒態勢が敷かれました。
繒服は幅 1 尺、長さ 5 丈(鯨尺)の巻物 2 本(4 匹分)からなり、万が一に備えて予備分も作成しています。

令和度の大嘗祭

私たち一般財団法人古橋会が中心となって、地域で稲武地域大嘗祭繒服調進特別委員会を設置し、いなぶまゆっこクラブが養蚕製糸作業を行いました。

令和元年(2019) 10 月 2 日に出発祭を斎行し、翌日の 10 月 3 日に宮内庁にお届けして、宮中三殿を参拝後、神嘉殿にて祭祀が執り行われました。

いなぶまゆっこクラブ

継承のために立ち上がった有志団体

古橋源六郎暉皃が地域に養蚕業を奨励して以来、稲武では養蚕業がとても盛んになり、最盛期では稲武地域全体で養蚕農家が 400 軒以上あったと言われています。
しかし、昭和中期以降は減少し、やがて養蚕農家が無くなってしまいます。今は、有志団体「いなぶまゆっこクラブ」(金田平重 代表)が毎年、桑畑の整備、蚕の飼育、糸取りなどを手作業で行い、技能継承や伝統文化の継承に取り組み、一般財団法人古橋会が彼らをバックアップしています。

まゆっこセンターと桑畑
毎年約8000頭のお蚕さんを飼育しています
足踏み式座繰り機にて丁寧に糸引きします

普及活動

小学校2年生の飼育体験

毎年、地元の稲武小学校の2年生全員にお蚕さんの飼育体験をしてもらっています。一人あたり約20頭を大切に育てて、繭にして、手芸品を手づくりします。

絹がお蚕さんの命をいただいて作られていることを実感しにくい現代において、少しでも、絹やお蚕さんのことを身近に感じてもらうための活動です。

糸引き実演・自由参観日

毎年5月に開催されるふるさとふれあいウォーキング「歩かまい稲武」などで、糸引き作業の実演を行っています。
足踏み式座繰り機や、手回し式座繰り機による糸引きを、実際に体験していただくこともできます。

お蚕さんの飼育は、6月中に開催する自由参観日でご覧いただくことができます。

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4Kドキュメンタリー映画
「時の絲ぐるま」上映会

石井友規監督作品の映画「時の絲ぐるま」は、麁服(あらたえ。麻織物)と、繒服(にぎたえ。絹織物)という2つの糸の伝統文化に着目した、4Kドキュメンタリー映画です。

上映会は全国各地で開催され、豊田市内の交流館でも開催されてきています。自主上映会の開催も可能ですので、こちらから石井監督にお問い合わせください。