愛知県立芸術大学の皆さんが稲武シルクと共同で工芸エキスポ2021に出展しました(令和3年度活動報告)

愛知県豊田市稲武地区には、全国トップレベルの伝統文化が脈々と受け継がれている特別なシルクがあります。
令和3年度から、愛知県立芸術大学デザイン専攻の本田研究室と稲武シルク(稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会)が共同プロジェクトを行っています。

愛知県立芸術大学に通う学生の皆さんの新鮮な感覚から、シルクという長い歴史のある素材を捉えていただき、シルクの新しい表現の可能性がいくつも見えてきました。

目次

「素材の現在(いま)を見て、未来を考える」柴崎幸次研究室・本田研究室

⽇本には様々な素材があるが、それらは⾃然や環境をもとに⼈の創意⼯夫により開発され、現在も新たな観点から素材の開発が⾏われている。
その素材を使って⾏うデザイン活動は、環境や経済性など現在の様々な課題を解決する可能性を秘めている。
この課題はサスティナブルデザインの⼀貫として素材の現在の姿を⾒定め、従来の発想だけでなく、地域や環境、歴史、伝統を視野に⼊れた新たな発想によりデザイン活動を⾏うプロジェクトを実施する。

令和3年度は、稲武シルクの他に、名古屋節句飾(有限会社加藤人形様)、尾張七宝(有限会社加藤七宝製作所様)の合計3テーマについて、学部2年生・3年生の学生さんが、あいち工芸エキスポ2021(2021年11月27日-29日)での学生コラボ展に向けて、デザイン・制作・展示活動に取り組みました。

5月 大学での講義

愛知県長久手市にある愛知県立芸術大学のキャンパスで、一般財団法人古橋会の古橋真人が講義を行いました。
稲武の養蚕や製糸の伝統文化や地域の歴史などをお伝えし、大嘗祭(だいじょうさい)に調進した繒服(にぎたえ。絹織物のこと)の予備や、伊勢神宮に献納する生糸などを実際に見ていただきました。

令和3年度の工芸エキスポに向けたプロジェクトでは、何らかの商品開発というわけではなく、もっと広く、シルクの新しい表現を自由に考えていただくことにしました。

講義の後にいただいた感想では、面白かった、興味が湧いたという感想が多くて素直に嬉しかったです。
愛知県や稲武のシルクの伝統文化も知らなかったし、お蚕さんの一生についても知らなかったというご意見もありました。また、その知られていない状況がもったいないし、残念という感想もありました。

6月 稲武訪問

3つのテーマの中で、稲武シルクを選んだ学生さんが、ちょうどお蚕さんを飼育している初夏の稲武を訪れました。
普段は、なかなか山深い中山間地域を訪れる機会も無いし、お蚕さんを実際に見る機会も無いと思います。日本の伝統文化や宮中文化は、日本の自然や四季に根ざしたものが多いのですが、そうした自然や四季に触れる機会が少なくなってきているのが現代なのかなと感じています。

学生さんの稲武の写真

表現の研究と発信

稲武シルクチームの学生の皆さんは、Instagramにて「愛知県芸シルク稲武(@aigei_silk_inabu)」というアカウントを開設して、シルクを用いた新しい表現を研究&発信してきました。
以下にいくつか紹介させていただきます。

11月 あいち工芸エキスポ2021 学生コラボ展

シルクを使った美しいものを作り 知らない人に伝える

学生の皆さんは、活動の目標を「シルクを知ってもらう」「空間で素材を感じる」「写真映えする空間を作りたい」と決め、白波糸(しらなみいと)というインスタ―レーションを制作展示されました。

手回し式の座繰り機を使って繭から生糸を巻き取っていく工程でできる「帯状の生糸の束」は、独特の光沢や形状記憶性を持っていて、それをお客様にも体験していただけるような作品になっています。

学生さんの写真

3月 まとめ

令和3年度のまとめとして、年度末にオンライン報告会を実施しました。
愛知県立芸術大学に通う大学生に、稲武やシルクについてインタビューした動画のほか、以下のような表現が報告されました。

稲武シルク活動報告※画像は拡大できます

GIFアニメーション[まゆの糸を取り切ると中には]

GIFアニメーション[繭の個数に比例して糸の太さが太くなる]

GIFアニメーション[繊維]

来年度(令和4年度)も稲武シルクとの共同プロジェクトは継続

学生の皆さんは、普段は縁遠い『地域』というものに向き合い、「地域や社会のために」というデザイン的な発想と、「美しい表現」というアート的な発想の狭間で、試行錯誤があったのではないかと思いました。

令和4年度も、愛知県立芸術大学デザイン専攻の本田研究室と稲武シルク(稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会)の共同プロジェクトは継続予定です。
身の回りからシルクが無くなっていきつつある現代にあって、未来をつくることができる新しい可能性を模索していきたいです。

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この記事を書いた人

私たちは、300年以上の歴史がある豪農古橋家の歴史と家訓「家は徳に栄える」を受け継ぐ財団法人です。
私たちは、豪農旧家、中山間地域、歴史や伝統文化など、古めかしくて時代遅れとみなされたものを、現代においても通用する形に磨き上げて、人と人との繋がりが人を支え、人間性に根ざした、与え合う社会の実現に貢献していきます。

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