シルクの力で、新しい未来を実現しよう!【令和4年度第2回稲武KAIKO学】河合崇様(ユナイテッドシルク株式会社)講演とパネルディスカッション
養蚕製糸の新しい可能性を学ぶ勉強会「稲武KAIKO学」
令和2年度から稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会(事務局:豊田市役所稲武支所。以下、実行委員会)が地域に発足しました。
稲武の養蚕製糸の伝統文化を、稲武のまちを持続可能にする「まち守り」の視点で捉え、新しい産業を模索しつつも、地域住民から遊離したものにならないよう、地域の暮らし、自然との共生などまで見据えた、志の高い活動にしようとしています。
これまで実行委員会では、地元の保存団体「いなぶまゆっこクラブ」を支援したり、映画「時の絲ぐるま」の上映会を豊田市内の各地の交流館で開催したり、足踏み式座繰り機を復元したり、豊田国際紙フォーラムで映像作品を制作したり、愛知県立芸術大学と共同プロジェクトをしたり、各種イベントで普及活動を行ってきています。
今回実行委員会が主催する「稲武KAIKO学」は、カイコやシルクの新しい可能性を学ぶべく、毎回外部講師をお招きしてご講演いただきます。地域住民や企業、研究機関、関連団体まで巻き込んで、自由闊達なディスカッションを行って、新しい活動が芽生えるきっかけになることを目的としています。
これまでのKAIKO学は以下の通りで、農研機構の瀬筒様にはカイコやシルクの新しい可能性を広範囲に教えていただき、エリー株式会社の梶栗様にはシルクフードの魅力を教えていただき、堤幸彦監督にも大変興味を持っていただきました。
2022年12月4日 令和4年度第2回稲武KAIKO学 概要
テーマ | シルクの力で、新しい未来を実現しよう! |
日時 | 2022年12月4日(日) 13:30~15:30 |
会場 | 豊田市役所稲武支所 2階多目的ホール |
講師 | 河合崇 様(ユナイテッドシルク株式会社) |
ゲストスピーカー | 清谷啓仁 様(ユナイテッドシルク株式会社) |
アドバイザー | 山出美弥 様(名古屋大学大学院環境学研究科) 冨田秀一郎 様(農研機構)※会場からご参加 |
主催 | 稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会 |
講師 河合崇様のご紹介
ユナイテッドシルク株式会社
代表取締役社長
1973年生まれ、大阪府出身。
京都大学経済学部卒業後、住友商事株式会社にて勤務後、今治市の繊維専門商社田窪株式会社に在籍(妻の家業)。
2016年にユナイテッドシルク株式会社を設立。「愛媛シルクプロジェクト」では、2016年伊予銀行ビジネスプランコンテスト最優秀賞など、受賞実績多数。
ゲストスピーカー 清谷啓仁様のご紹介
ユナイテッドシルク株式会社
執行役員
1987年生まれ、兵庫県神戸市出身。
神戸大学経営学部卒業後、株式会社ユニクロ、兵庫県庁(観光物産課)での勤務を経て、2016年よりユナイテッドシルク株式会社に参画。
オリジナルシルク化粧品ブランドである「SILMORE」の企画開発やブランディング、自社工場である「せとうちシルクファクトリー」の運営など、事業の中核的な役割を果たす。
アドバイザー 山出美弥様のご紹介
名古屋大学大学院環境学研究科
建築・環境デザイン講座 助教
宮脇・山出研究室
岡山県出身。大阪大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)取得。
専門は都市計画、まちづくり、建築デザイン。
近年は人口減少地域の都市再生を地元住民と共に考えているほか、東日本大震災の被災地のまちづくりにも携わっている。
アドバイザー 冨田秀一郎様のご紹介
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
生物機能利用研究部門
カイコ基盤技術開発グループ グループ長
福岡県出身。東京大学大学院農学系研究科博士(農学)。
昆虫を材料とした発生生物学、進化生物学が専門。昆虫の生理、遺伝、発生などの生物学的現象を研究対象にする一方で、カイコの新しい活用に向けた規制への対応や、情報提供、普及活動も行っている。
※今回は会場からご参加されています。
実行委員会より一般財団法人古橋会常務理事 古橋真人※本記事執筆
一般財団法人古橋会 常務理事
稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会 委員
稲武で明治期に殖産興業として養蚕業を奨励し、伊勢神宮献糸の伝統文化を復興した古橋家6代当主の古橋源六郎暉皃(てるのり)の来孫(ひ孫の孫)にあたり、一般財団法人古橋会の経営者。
古橋家の資産を継承した財団法人古橋会は、稲武の養蚕製糸の伝統文化の継承事業も手掛けており、現在は豊田市稲武献糸会の事務局も担っている。
愛知県豊田市稲武はシルクのトップブランド
稲武地区からは、明治15年(1882)から毎年、伊勢神宮に生糸を献納しており、令和元年度からは熱田神宮にも生糸の献納を開始しました。
また、皇室で最も重要な祭祀である大嘗祭(天皇陛下の代替わり後に最初に行われる新嘗祭のこと)では、繒服(にぎたえ)という絹織物も、稲武から調進しています。
これは、平安時代の古書(延喜式など)に、重要な祭祀には三河産の生糸を用いるのが良いという記述があるためです。稲武の養蚕製糸の伝統文化について詳しくは以下の記事をご覧ください。
第1部:河合崇様 基調講演 シルクの力で新しい未来を実現しよう!
以下は、河合様にご講演いただいた内容を、実行委員会の委員である一般財団法人古橋会常務理事の古橋真人が要約執筆したものになります。
シルクに取り組む3つの理由
- ①地方創生を有言実行できる
- ②広域(地域)連携できる
- ③日本が世界に発信できる素材
事業の原体験は、住友商事時代の繊維原料・マテリアルビジネス
- 1993年7月(京都大学在学中)大阪から松山に旅行
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人口50万人のコンパクトな松山市で人の優しさに触れて、いつかここで地域を振興する地方創生の事業をしたいと漠然と思いました。
- 1997年4月 住友商事株式会社に入社
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世界30カ国のコットンやシルクなどの繊維を扱う仕事をしました。
- 2006年4月 田窪株式会社(愛媛県)に入社
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総合商社に勤務していたときに知り合った取引先の女性と結婚して、その方の実家の家業であった愛媛県の田窪株式会社に入社しました。この会社は、ミシン糸を日本で一番扱っている老舗の繊維会社です。
2009年に愛媛県に移住しました。 - 2016年4月 ユナイテッドシルク株式会社創業
シルクは着る以外にも、食べてよし、塗ってよし
食べるということについては、良質なタンパク質(人に必要な18種類のアミノ酸を含むタンパク質繊維)があったり、機能性(グリシン、アラニン、セリンなどの成分)があったりします。
例えば、パンに入れると、しっとりもちもちと、食感の向上が期待できます。
稲武でも、道の駅どんぐりの里いなぶの米粉パンは大変人気ということで、シルクパンのような商品ができると良いのではないかと思います。
塗るということについては、シルクには保湿成分が含まれていますので、今日も商品を持ってきていますけど、ハンドクリームや化粧水、シャンプーのような商品をつくることができます。また、シルクには洗浄効果もあります。
最初は趣味や嗜好的な商品から事業をスタートしていますが、将来的には、シルクを再生医療やワクチン原料に活かすような、みなさんの健康寿命を増進する事業も目指しています。
日本の養蚕業は衰退してしまったが、世界では成長産業
世界的に見れば、シルクは近年でも成長産業で、繭生産量はずっと右肩上がりです。
日本の生糸産業の歴史を振り返ってみますと、1885年から1940年ごろまで、日本の輸出量や生産量は成長していました。その頃は、アメリカやフランスなどに輸出をしていたのです。
戦前は、生糸が日本の富国強兵のための外貨獲得の主要な手段だったのです。
しかし、第二次世界大戦が始まると、アメリカやヨーロッパ向けの輸出が止まってしまい、生産量も輸出量も激減します。
戦後は、中国や南米などの安く生糸を生産できる国に負けてしまったという経緯があります。
多様なシルクの可能性のなかで、アイテムを絞る
農研機構さんを始めとする昨今の研究により、シルクの新たな用途は約60以上の産業に広がっていると言われています。
その中で、企業として注力する事業を考えた時に、従来の衣料用途に加え、食、化粧品、医療での活用が重要だと考えました。
たった3ヶ月のスピードで最初の商品化に成功した
2016年に中小企業庁が推進した「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」の中で、10月1日時点では何も商品が無い状態から、翌年の1月にはハワイで商品発表を行いました。
たった3ヶ月でブランドを作って商品化をするということを、最初はみな半信半疑でしたが、実際にタオルを作ることができました。
この時は、新参者の我々では繭を仕入れることができなかったため、製糸工場に残っていたキビソ(蚕が最初に吐き出した固い糸)という副産物を活用しました。
この取組は、いよぎんビジネスプランコンテスト2016で最優秀賞をいただくことができ、心の支えになりました。
「愛媛シルク」というみんなで繋がり拡げるプラットフォームづくり
愛媛県では、それぞれの地域に長い年月をかけたシルクの伝統があります。
「伝統と革新」を合言葉に、伝統を重んじながら新しい未来を創造していくプラットフォームを作りました。
愛媛シルクは、愛媛から世界へつながる持続可能なプラットフォームです
愛媛県は中予、東予、南予と呼ばれる3つのエリアに分かれ、20の市町村があります。
その中で、南予が特に養蚕が盛んで、蚕種工場、製糸工場、養蚕農家があります。
現在も汗をかきながら各地を回って、愛媛県全域にシルク産業を広げていこうとしています。
「愛媛シルク」の理念
- STATEMENT:シルクで地域共創、ベストプラクティスを創り、未来を創造する
- MISSION:愛媛県の経済、文化の発展に貢献する
- VISION:シルクで未来を創造する
このような理念を共有し、経済、文化、結束、先進性、独自性、意外性という観点で価値づくりをみんなで考えています。
ユナイテッドシルク株式会社の取り組み
「シルクの力で、新しい未来を実現する」ことを目指し、シルクの可能性を広げ、食品、化粧品、そして医療等のあらゆる分野で活用していくための技術革新に取り組んでいます。
現在は、愛媛県松山市や今治市において、スマート養蚕&シルク原料抽出加工までを行う一気通貫体制を実現しています。
- 【運営施設・設備等】
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▼愛媛シルクショールーム:愛媛シルクの魅力を体感してもらうための情報発信拠点
▼せとうちシルクファクトリー:繭を加工し、水溶液・粉末化することができる工場施設
▼松山シルクパーク:スマート養蚕技術を導入し、集約型養蚕を可能にする施設 - 【これまでの実績】
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2016年:伊予銀行ビジネスプランコンテスト2016 最優秀賞
2017年:ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2017 政策奨励大賞(地方創生担当大臣賞)
2018年:広島SDGsビジネスプランコンテスト2018 優秀賞
2019年:環境省 グッドライフアワード2019 エシカル賞
2019年:愛媛県 三浦保環境賞2019 知事賞
2020年:第11回週刊愛媛レポート イノベーション賞
2021年:科学技術振興機構(JST) 産学共同本格型 A-STEP アグリ・バイオ分野(全国5案件)採択
2022年:Awaji Well Being ビジネスプランコンテスト2022 きずな部門 優秀賞
新しいシルク産業の創出に向けスマート養蚕&シルク原料抽出加工の一気通貫工場が愛媛県で稼働開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000096380.html
産官学連携の愛媛シルク協議会
この協議会が発足する前は、愛媛県の野村町(2004年に東宇和郡内の宇和町・明浜町・城川町、および西宇和郡三瓶町との5町の新設合併で現在の西予市となる)という町がシルクで有名でした。
より広い範囲で仲間を巻き込んでいくということを目指して、産官学連携の愛媛シルク協議会を発足しました。
最初は20団体ほどだったのですが、現在は47団体が参加しています。
これも1つ1つ回っていき、1回で話がつかない場合は何度も通って、協力してほしい、愛媛の養蚕を残すために力を貸してほしいと、自治体のみなさんと一緒に事業者を回りました。
伊予生糸(いよいと)を使用した白無垢
愛媛県の中村知事にもご賛同いただき、伝統を絶やさぬようということで、愛媛シルク協議会では伝統の高級生糸「伊予生糸(いよいと)」を使用した白無垢を作りました。
伝統をしっかり大事にしていくんだ、絶対に諦めないんだという気持ちで、産官学みんなでやっています。
愛媛シルク協議会でのサポート体制
愛媛シルク協議会の参画メンバー向けに、サポート体制を構築しました。
- 専門家による支援
- 新商品開発
- マーケティング拠点における市場調査
- 情報発信
- 販路拡大
こういった当たり前のことなのですが、当たり前のことを地道にやっていこうと声をかけて、賛同者が増えていっています。
また、愛媛シルクシンボルマークも制定しました。
愛媛シルクで多様な事業者が新商品開発
商品開発では、世界で活躍するクリエイター、デザイナーをお呼びし、しっかりと議論を行って形にしていきました。
一昨年は15ほどの事業者の方と、シルク関連商品の開発に取り組みました。
最初は、「シルク??」という感じだった事業者さんもいらっしゃいましたが、だんだんと、面白いね楽しいねという反応になっていきました。
食パンや飴、石鹸、ハチミツ、プリン、地ビール、ナイトキャップ、養蚕キット、タオルなど、多様な新商品が生まれてきました。
大手企業を辞めて養蚕農家を継いだ若者が作った「おおず繭せっけん」
地元で長く養蚕をされてきた瀧本養蚕さんの孫の瀧本慎吾さんが、勤めていた大手企業を退職して、養蚕農家を継ぐために帰ってきました。
そんな慎吾さんとお話して、養蚕をしながら商品を一緒に作ろうということで、「おおず繭せっけん」が出来上がりました。
慎吾さんも最初は、養蚕作業が忙しく時間が取れないと言っていたのですが、清谷もしっかりフォローをして数ヶ月で商品化にこぎつけました。売れ行きも好調です。
愛媛シルク協議会に参画する事業者の商品
こちらは繭のような形をしていて、シルクパウダーを使った「きぬあめ」という商品です。
地元の老舗の菓子店が手掛けられました。
ハチミツにシルクのパウダーを入れたら、不思議なことにラムネみたいなすっきりとした味になったんです。
やってみると何かが起こるということもあります。
道後温泉にある有名なプリン屋さんが手掛けられた商品です。
普段扱われているプリンよりもプレミアムな商品になっています。
こちらは冬虫夏草とマルベリーエキスを配合した、地元ブルワリーさんのクラフトビールです。
酒類の販売には免許が必要でして、うちのメンバーはこのために講習を受けて免許を取って販売しました。
こちらも売上は好調で、地域の方が「がんばってるね」「お酒好きだから買うよ」と応援してくださったことが非常にありがたかったです。
マーケティング拠点「愛媛シルクショールーム」で市場調査
愛媛県で企業向けの研修講師をされている木曽千草さんに、愛媛シルク大使になっていただくことを何度もお願いして、受けていただきました。
木曽千草さんが中心となって、いろんな方を呼んでワークショップを10回くらい開催して、商品づくりの検討をしました。
マーケティング拠点「愛媛シルクショールーム」は、名古屋で言うと栄地区のような、松山市の一番の中心地の交差点のところに開設しました。これも、愛媛県や松山市といった自治体さんと連携して実現しています。
愛媛県産のシルクを使ったボディケア・ヘアケア商品を中心に様々な商品を取扱っております。11月中旬からシルクパウダー入り食パンなどの食品の販売も始ります☺️
— 【公式】愛媛シルクショールーム (@ehimesilk) November 6, 2021
このツイートをリツイートしてくれた方全員にヘアケア商品のプレゼントキャンペーンを行なっていますので、店頭にて画面をご提示ください pic.twitter.com/Rcn3eVbIE8
HPやパンフレット、SNS、メディアによる情報発信
シルクのある生活や、商品の魅力をきちんと可視化して伝えるということは、ものすごく労力と手間がかかることです。ここをしっかり行い、かつ、新しく商品開発を行いやすいように、愛媛シルクで共通したブランディングを行い、販路や価格設定のお手伝いができるようにしています。
全国シルクサミット2021 in 愛媛
最初は野村町から始まったシルクの取り組みを愛媛全域に広げ、また、愛媛シルクを全国に発信することができ、とても貴重な機会でした。
このシルクサミットをきっかけに、愛媛県の中でも大洲市など、「うちの市も頑張るよ」という輪が自然と広がっていきました。
愛媛シルク大使の木曽千草さんが美魔女コンテストグランプリ受賞
愛媛シルク大使をやっていただいている木曽千草さんが、先日の12月1日に第13回美魔女コンテストTOKYOでグランプリを受賞されました。
シルクがきっかけになって、その人が、その地域が、その事業者が、良い意味で変わっていくということを実感して、本当に嬉しかったです。
一般社団法人愛媛シルクの設立と地域団体商標の取得
愛媛シルク協議会の運営と、地域団体商標(愛媛県で13番目)取得手続き中の愛媛シルクロゴの管理を行う、一般社団法人愛媛シルクを設立しました。
地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律に基づく地域団体商標の登録主体に関する特例措置(一般社団法人による地域団体商標の出願)を活用しています。
国産素材としての革新シルク
ここからは、地域振興や仲間づくりといった話題ではなく、やや革新的な話題になります。
輸入に頼らない国産素材の開発を以下の環境下で行い、輸出できる国産素材産業を創出したいと考えています。
- 脱炭素(カーボンニュートラル)素材
- 素材の製造を日本で行うことはもちろんのこと、その原材料も日本産とする
- 世界的な人口増加から不足される衣食住にかかわる素材として、食(たんぱく質)、繊維(天然繊維)から考える
- 素材開発から波及される産業が、経済、社会、環境を配慮した形で、規模感も期待できる
- 日本が世界にリードする技術に投資を行い、実践する
シルクの革新実例:メルセデス・ベンツにAMSilkが採用される
植物由来のたんぱく質でシルクのような合成繊維を作るスタートアップ企業AMSilkが、メルセデス・ベンツとパートナーシップを発表しまして、内装のドアパネルなどに採用されました。
今日は豊田市ということで、もしかしたらトヨタ自動車さんが、シルクを採用する、もっと言うと、一緒に素材開発を行うということが起こってくると良いなと思います。
シルクの革新実例:アディダスなど4社とボルトスレッズがパートナーシップ
酵母を用いて合成したたんぱく質のシルク繊維「マイクロシルク(MICROSILK)」を開発するサンフランシスコ発のスタートアップ企業ボルトスレッズ(Bolt Threads)が、アディダスやケリングを含む4社との戦略的パートナーシップを発表しました。
パリ協定による脱化学繊維の機運
パリ協定によって、特にヨーロッパなどでは、ポリエステルのような石油由来の化学繊維を極力使わないようにしようとしています。
日本では、微生物発酵プロセスによりつくられるタンパク質素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」の開発をされているSpiber株式会社さんのような企業もありまして、将来的に不足する繊維素材に注目している企業が世界中で出てきています。
天然繊維を使おうとした場合に、コットン(東京ドーム1個で約200kgほどしか収穫できない)やウール(ヒツジ肉の副産物)は作付面積に制限があります。
シルクは、自動化・機械化して量産することで世界を牽引し、変革することができるかもしれません。
シルクの新しいビジネスモデルは高効率な垂直統合型
国内のシルク産業が輸入超過に陥っているところから、成長する輸出産業になっていくには、海外ニーズに対応し、原料の養蚕から最終製品までを責任を持って地域でやりきっていくことが大事だと考えています。
これまでのシルク産業では、繊維用途を前提に蚕が飼育され、生糸となる繭層部分以外は低付加価値のものとして扱われてきました。
新しいビジネスモデルでは、①繭の生産、②原料加工、③商品開発、④販売を一気通貫サプライチェーンとして構築して、原料の全てを高付加価値化していくことを目指します。
事業展開の見通しとシルク成長戦略(医食同源、ニュープロテイン、高機能、高付加価値)
特に③商品開発の部分は、1社単独ではなく、地域で多様なパートナーシップを結び、地域共創型のモデルを作ることができます。
最初は化粧品領域を起点として、重量単価が高い領域方面では医薬品、重量単価が低い領域方面では、機能性食品、衣料品、配合飼料といった展開が見込めます。
私達は、繭層のシルクタンパク質の抽出・精製をする工場が必要だと考え、「せとうちシルクファクトリー」を作りました。
これで、愛媛以外の産地とも関係づくりができます。
松山シルクパーク構想
来年度には、200m四方の敷地にオープンファクトリーとして公開するスマート養蚕設備(新菱冷熱工業株式会社のシステム)や、魅せる愛媛シルクツーリズムを体験できる拠点整備を構想しています。
地域振興から、世界が抱える社会課題の解決(人口爆発による食糧危機の到来、マイクロプラスチックによる海洋汚染の拡大、2050年カーボンニュートラル)まで結びつけて、愛媛シルクの合言葉「伝統と革新」を実現していきたいです。
全国シルクビジネス協議会に参画
全国のシルク関係者の連携体制を構築して、シルクの様々な分野の利用を促進する目的で設立されました。
大日本蚕糸会が事務局になっていまして、全国シルクビジネス協議会のホームページもできました。
ユナイテッドシルク株式会社は、PR分科会の責任者と、繊維分科会の副責任者をしております。
全国シルクビジネス協議会では、幹事会社・団体で毎月会議を行って、日本のシルクがどうやったら良くなるかを議論しています。
今回、稲武の養蚕製糸文化伝承事業実行委員会さんも、全国シルクビジネス協議会に参加していただいたということで、今後も是非ご一緒させていただきたいです。
世界に先駆けてオーガニックシルクのガイドラインを設定
全国シルクビジネス協議会では、2022年11月に、「有機繭の生産に取り組もうとする国内の養蚕農家等の生産者と有機繭及びその加工品を購入しようとする消費者を根拠のない虚偽表示から保護すること」を目的として、国際的な有機の基準とも整合する「有機繭の生産及び表示に係るガイドライン」を設定しました。
最後に、シルクの魅力のまとめ
- ①地方創生を有言実行できる事業
- ②日本が世界に発信できる素材
- ③地域感連携で、情報発信
- ④スマート養蚕が世界をリード
第2部:パネルディスカッション
河合崇様に加えて、ゲストスピーカーの清谷啓仁様、アドバイザーの山出美弥様、実行委員会の古橋真人の4名でパネルディスカッションを行いました。
ご来場いただいた農研機構の冨田秀一郎様は会場からご参加いただき、司会進行は、㈲マイルストーンズの伊藤光弘様が務められました。
以下は、パネルディスカッションの内容を、実行委員会の委員である一般財団法人古橋会常務理事の古橋真人が要約執筆したものになります。
清谷啓仁様より自己紹介とメッセージ
会社は愛媛県なのですが、出身の神戸市に今も住んでいます。
当社の事業紹介については、河合からの講演の通りです。
今日はご来場の皆さまとも、共通の話題やテーマがたくさんあると思いますので、僕たちも学ばさせていただいて、実りあるディスカッションにしていきたいなと思います。
山出美弥様より自己紹介とメッセージ
私は名古屋大学、建築やまちづくり、都市計画を教えております。名古屋に来て3年目で、出身は岡山県です。
豊田市や稲武のことを学ばさせていただきながら、皆さんのお力になれればと思っています。
古橋真人より自己紹介とメッセージ
稲武の養蚕製糸の伝統文化の概要は、お手元にお配りしている資料をご覧ください。
毎年の伊勢神宮や熱田神宮への生糸の献納や、大嘗祭の繒服(にぎたえ)調進の担い手となっている、いなぶまゆっこクラブの皆さんも高齢化していくし、稲武地区も中山間地域ということで人口減少が止まりません。
伝統やまちを守るために、シルクの力を活用できるのではないか。
この全国トップレベルの貴いストーリーが新しい求心力や魅力になって、この地域がもう一度盛り上がるきっかけになるのではないか。
このように考えて、実行委員会で様々な活動をしています。
現在、お酒などの地域の産品を、神宮や皇室にお供えしている事例は全国にあります。これは、そこに産業や雇用があって、担い手がいるからこそ続けられています。
今日河合さんにお話していただいたシルクビジネスのお話は、これによって産業や雇用が盛り上がり、地域振興や文化継承にもつながるお話でした。人や情報やお金などが循環していくきっかけとして、シルクの新しい可能性を模索しています。
冨田秀一郎様より自己紹介とメッセージ
稲武KAIKO学は通算3回目で、私は3回とも参加させていただいています。
毎回この稲武KAIKO学に参加しますと、すごく頭を使って、すごく疲れるのですが、心地よい疲れだと感じています。
我々農研機構は、今の段階では、これまで蓄積してきたテクノロジーを提供するというお付き合いで始まっていますけど、これからは、新しい技術を開発していくということでもお役に立てるのかなと考えています。
「やらないリスク」よりも「やるリスク」を取って、思いが伝播していく
前回の8月に稲武KAIKO学を開催したときは、映画監督の堤幸彦監督にも参加していただきました。できるだけいろんなタイプの方に入っていただき、いろんな方が地域を越えて連携していけると良いなと考えています。
そんな中でも、カイコやシルクの力を研究されている農研機構の先生に軸として入っていただけるのは、とても助かります。
また別の、まちづくりや都市計画という観点から客観的にこの取り組みを捉えていただける専門家として、名古屋大学の山出先生にも入っていただきました。
私はいろんな町に行って地域の方のお話を聞いて、研究活動をしたり、まちづくりに携わったりしています。
そうした中で歴史を守りながらも、新しいことにチャレンジして、攻めていく姿勢はとても大事だと感じています。ただ一方で、失敗したくないという気持ちもある中で、河合社長の守りながらも攻めていくという姿勢について伺いたいです。
愛媛県の野村町という小さな町から始まった愛媛シルクプロジェクトですけど、西予市に広がり、その隣の大洲市に波及しということで、「思いは伝播していく」と感じています。
また私自身は大阪出身なので、愛媛の人からすると移住者ということになりますので、プレッシャーも当然感じるのですが、全て成功することは無いと思っています。
うまくいくこともあれば失敗もあって、とはいえ失敗も無駄ではなくて、紆余曲折ありながら進んでいくという実感です。
私はいつも、「やるリスク」と「やらないリスク」を考えています。
やらないということを選択すると、何も起こらない。「やらないリスク」の方が大きいと考えて、やることにする。
ずっと長らくリスペクトされ敬われてきた伝統を守り、諸先輩の思いを引き継ぎながら、良い意味で「やるリスク」を取っていくことで、その思いがどんどん伝播していく。
私もやってみよう、ここまでやってみようと繋がってくることで、シルクで地域共創のベストプラクティスになっていければと思っています。
ありがとうございます。河合社長のお話を聞いているとパワーをもらえますよね。
河合社長の取り組みは規模が大きいので私もびっくりしているんですけども、私たち一人ひとりにとっては小さなことでも良いと思います。まず一歩踏み出すということは、規模にかかわらず大事なことかなと思っています。
小さな一歩の積み重ねが、やがて産業になる
思いの伝播ということで、清谷さんは河合社長の会社に入社されていて、思いやパワーが伝わったお一人なのかなと思います。
講演の中で河合が申し上げた2016年10月1日の愛媛シルクプロジェクトのスタートについてですけど、私もその場にいまして、河合が3ヶ月後に商品発表をすると言い出して、正直、この人は何を言っているんだろうと感じました。
誰もそれができるとは思っていなくて、河合だけが強くやると言って、言うだけではほとんど9割くらいの人は動かないし、思いも伝わらない。
でも、実際にやり始めて、それも何年後という遠い未来ではなく、3ヶ月後にやります、そのために今日明日からやります、という積み重ねが、人を動かす思いの伝播になっていくのかなと思いました。
河合の横で見ていると、今はできなさそうなことでも、やっぱりできるようになるんだろうと思います。
小さな成功体験の積み重ねがあって今があると思いますので、山出先生がおっしゃったように、小さくても1つこの地域から何かが生まれたら、次は2個目、やがて10個目となっていくと、それが産業ということになると思います。
これは別にシルクに限ったことではなくて、どの産業でも一緒だと思います。それこそ、トヨタ自動車も最初はそうだったに違いないですし、みんなに平等にチャンスがあるんじゃないかなと思っています。
シルクが「自分ごと」になる仲間づくり
いなぶまゆっこクラブの皆さんが毎年生糸を作って、それを一般財団法人古橋会が支援して、今はKAIKO学を主催するような地域の実行委員会ができてということで、地域を挙げてという体制が小さくできつつあります。
私は、古橋会以外にも、様々なプレイヤーの方に関わっていただきたいと考えています。
今日、河合社長が紹介してくださった中に、食パンとか、飴とか、身近な商品がたくさんありました。稲武でも、小さくても、シルクのストーリーに絡めた商品や取り組みができてくると良いなと思いますし、豊田市全体に広がっていくと良いなと思っています。
いまさらシルクで何ができるのかほとんどの方が知らないうえに、実際にリスクを取って失敗する可能性もあることにチャレンジしてもらう、巻き込んでいくという時に、どんなことを心がけていらっしゃいますか?
巻き込もうとするところでは、私はやっぱり日々の中でお役に立ちたいというところがありました。皆さんもおそらく、誰かのために役に立ちたいっていうところはあると思います。
そして何よりですね、今日お話したなかで飴屋さんを例にしてみます。
飴屋さんの立場に立ったら、例えば100円の飴が、150円になって売れたら実入りが増えますよね。
「シルクパウダーを混ぜて飴を作ってください」だけだと、私の都合で、私からのお願いだけになってしまいます。
そこから一歩進んで、飴屋さんも実入りが増えるんだということで、「自分ごと」になっていく。
もちろん、頼まれたから役に立ちたいという気持ちはあるんですけど、巻き込まれた方にとっても、自分も得できるぞと、自分の商品が高く売れるかもしれないぞと、持ちつ持たれつですね。
また、ペイフォワードと言いますか、金銭的なことだけでなく、心の豊かさや勇気や元気の受け渡しということもあります。
今日お話させていただいた木曽千草さんも、お金どうこうじゃない愛媛シルク大使の活動が、最終的に美魔女コンテストで、そうした心の表れによって優勝されたとも思うんです。
だから必ずその人にとってプラスになるということを伝えて、伝播をしていく、「自分ごと」にしていく、こういうことなのかなと思います。
稲武でも、ペイフォワードの最初の一発目を今私たちがやっているのかなと思います。
稲武ではどんな方向性でやっていきたいか、古橋さんにお話していただきたいです。
まず少し古橋会のお話をさせていただくと、いなぶまゆっこクラブの活動を支えていくためにも、経済循環を生み出して持続可能な形にしていくことが必要です。
新しい価値づくりをするということで、まず最初に何かやってみようということで、シルクの入浴剤の商品開発に取り組んでいます。稲武の繭から保湿成分を抽出して、それが配合された入浴剤です。
今もう生産に入っていて、段ボール箱で何箱分も仕入れるんです。それは在庫になるため、売れ残ってしまうと損失になってしまいます。このように私も、リスクを取って新しいことをやってみようとしています。
私以外の方も、大きな一歩でなくても良いので、小さな一歩でも、何か道の駅のパンとか、うどんとか、プリンとか、そういったものが出てくると、新聞に載るとか、何かちょっとした生きがいになるとか、お土産物として家庭に持ち帰られて、「稲武のシルクが入っているらしいよ」とか、「こんな伝統文化があるんだ」と話題になるような、そんな広がりに期待しています。
スマートなお蚕さんとの付き合い方は、スマート養蚕と身近なふれあい
話が少し変わりますけど、稲武のような過疎地域では担い手不足が一番の課題になっています。スマート養蚕はその解決策になるのかなと思うのですけど、どのようなものなのかもう少し教えていただけますか。
スマート養蚕という言葉はまさに造語です。農業の分野では、ドローンなどでできるだけ人手をかけずに作業を行うスマート農業が実用化されつつあります。
スマート養蚕については、私たちは、新菱冷熱工業株式会社さんと一緒に取り組んでいます。新菱冷熱工業さんが2016年から5ヶ年の国家プロジェクトとして、農林水産省から委託を受けて、養蚕システムを作りました。
簡単に言うと、人の手を介さずに自動で蚕を飼育するということです。
人が蚕に桑を与えたり、上蔟をすることは大変な作業ですけど、これを自動で行えるようになると、これまでとは比べ物にならない大量生産も可能になります。
逆にできないこともありまして、それは桑畑です。
桑の栽培は今のところ自動ではできなくて、スマート養蚕でできることは自動化し、飼育量が増えれば桑畑もより必要になりますので、地域を挙げて桑の栽培に取り組んでいく、これがスマートかなと思います。
一つ追加させていただくと、スマート養蚕では衛生管理や品質管理が徹底してできるようになります。これによって、食べることや、美容健康、メディカル領域での利用がよりやりやすくなります。これがシルク業界にとって重要なことになってきます。
桑畑はどうしても必要になってくるということで、例えば大学と連携して学生さんと一緒に作業するとか、そういった可能性はありますか?
もちろんあると思います。
文化や生活の知恵、ローカルナレッジとも言いますけど、その地元の知識を若い頃に経験して、その後都会に行って就職するのもそれで良いと思っています。
都会にいたとしても、ローカルナレッジに触れたことがある人材は、都市と農村を繋ぐ人材になります。
稲武の小学生はみな学校で蚕の飼育を体験するとお聞きしていますし、小さな頃から当たり前に身近にあるというのが、文化の継承にはとても良いです。
稲武では10年以上前から、いなぶまゆっこクラブの皆さんが小さな蚕を稲武小学校2年生の子どもたちに渡して、蚕を飼育してもらっています。
桑畑までいかずとも、桑の木がもっと身近にあると良いなと感じています。
蚕の飼育キットが今日の講演の中にも少し登場しましたけど、産業という規模ではないですが、生き物とのふれあいや生きがいという点から、気軽に蚕を飼育できる機会を作るには、稲武や豊田市内に桑の街路樹を整備するとか、公園には桑の木を植えるとか、そういうことが増えてくると良いなと思います。
カブトムシを飼う代わりに、蚕を飼うみたいなことですね。
食品はシルクのキラーコンテンツになる
シルクを活用した商品開発は、今どんな商品が出てきていて、これからどんな広がりがあるのか、教えていただけますか。
まず私は最初に繊維から取り掛かったのですが、地域での特性を活かしたいと考えて、今治タオルを最初に作りました。あとは肌着やナイトキャップなどです。
その次に、ヘアケアとしてシャンプーやトリートメント、ボディケアとしてはボディソープやハンドクリームなどです。
シルク100%のニットで作ったすごく肌触りの良いマスクもあります。
また、地元の飲食店さんに、1時間くらい5人ずつお話をさせていただき、シルクパウダーを使って料理を作っていただきました。そうすると、だし巻き卵であったり、餃子であったり、シルクコーヒーであったり、皆さんいろいろと工夫してくださって、比較的すぐにできるなと思いました。
イメージとしては30ぐらいの商品群があるのかなと思います。
直近で注力していきたいのは、僕が神戸に住んでいて洋菓子店がとても多いので、クッキーやチョコ、生菓子などは挑戦していきたいです。
また、サプリメント系も実際に商品開発中で、まもなく販売できるかなと思います。
前回の稲武KAIKO学では、エリー株式会社さんが蚕のサナギから、パウダーなりペーストにして、それを食品に練り込んでいくというお話をされていました。
ユナイテッドシルクさんでは、どういった形で混ぜていらっしゃるのですか?
また、味や風味はどのようなものですか?
私たちはサナギではなく、繭層を使用しています。
白い繭の部分から15くらいの工程を経て、シルクフィブロインというものを抽出しています。
シルクフィブロインは高分子といって、分子がたくさん繋がっています。これをプチプチ切っていくと低分子となり、最後はペプチドになってアミノ酸になって溶けてしまいます。
分子量をどのくらいにするかというところで、例えばケーキだと分子量が10000くらいかな、サプリメントだと5000くらいかなと、分子量を調整して添加します。
バニラエッセンスみたいな感じです!
シルクフィブロインを入れると、無味無臭で食品が美味しくなります。
※(編集者追記)平尾和子 五十嵐喜治(2013),シルクフィブロインの特性と食品への利用,日本調理科学会誌,Vol. 46,No. 1,54~58 より
シルクフィブロイン溶液は、粘度の高いゲルや、メレンゲ状の気泡などにできる。
例えばブランマンジェでは、牛乳の代わりにフィブロイン溶液を使用することによって、弾力性が増大し、保型性がよくなった。
例えばヨーグルトゼリーでは、フィブロイン溶液を用いたものは、牛乳だけで調製したゼリーに比べてさっぱりとした食味となり、白度や光沢が増し、絹をイメージできる食品と考えられた。官能評価では牛乳とフィブロイン溶液を 1:1 に混合したものが最も好まれた。
食の分野は、シルクの拡販のキラーコンテンツに使っていければと思っています。
従来の分業型から、垂直統合型のビジネスモデルに転換することについて付け加えさせていただきます。
規模感は大きくても小さくても良いのかなと思うのですが、商品の最初から最後までを責任を持って自分たちのコミュニティや仲間で全部やるんだという意識を持つことが大事だと思います。
シルクフードで言えば、加工の一部を外部に依頼しても良いと思うのですが、商品のコンセプトや企画、原料、営業や販売のところを、きちんと自分たちでやっていくことで、正当な対価をいただくことができます。
カイコは糞も活用できる
会場から、お蚕さんの糞は何かに使えるのですか?というご質問をいただきました。
他の地域ですけど、ウイスキーですとか、お茶やクッキーにするという事例がございます。
お蚕さんの糞は「蚕沙(さんしゃ)」と言います。
少し話がずれますけど、企業が養蚕に取り組んでいく時に、命をいただいているということで、大切に使い切っていく、感謝をするということは大事にしたいです。
蚕沙は、漢方薬としても知られています。
蚕が元気でないと良い糞も取れないので、蚕を元気に飼育するということが大事ですね。
千葉の方では、蚕沙をブランデーに活かされていたと思います。
命をすべていただくということで、「いただきます」「ごちそうさま」という食育にも繋がりますし、飼育しやすいのも良いですね。
みんなで繋がり、みんなで拡げる
最後に登壇されている方から一言ずつメッセージをいただければと思います。
皆さん実は熱い思いをお持ちなんだということが改めて分かりました。
大阪から来た私からすると、名古屋の方っておとなしいイメージがありまして、今日会場に来てくださった皆さまには、今日の会の良かったところや、パワーをもらったところを是非発信していただきたいなと思います。
私も力になれることがあれば、いつでもご協力させていただきたいと思います。
愛媛シルクさんでは、おしゃれなロゴマークがあって、きれいなホームページに地域の事業者さんのシルクの商品がずらっと並んでいて、それをSNSなどで一括して発信できたり、ショップがあってご案内ができたりと、地域ブランドとして、販路や広告の体制ができていることが素晴らしいなと思いました。
稲武シルクでも、そのようなことができると考えていまして、地域の方からもご意見をいただきながら、実行委員会で検討していこうと思います。
僕たちも2016年にシルクの事業を始めて、現在7年目ですけど、到底1社だけではここまでできなかったと確信しています。
稲武でも、古橋会さんは主要プレイヤーになるのでしょうけど、古橋会さんだけではシルクの事業は成功しないと思います。
今日会場にお越しくださった方が、稲武の養蚕を支えていくんだという当事者になっていただき、うまく巻き込み巻き込まれながら、また、僕たちもお力になれることがあれば呼んでいただければと思います。
うまくいくこともあれば失敗することもあると申し上げましたけど、どちらかというと失敗や悩みの方が大きいくらいでして、そういったことをお伝えして、成功に導いていくお手伝いができるのではないかと考えています。
今現在、養蚕農家さんとの取り組みは全国で8件実施しています。稲武の方でも、例えば、シルクフィブロインの加工のところをお手伝いさせていただくことで、1が3になって5になって10、100と一緒にやらせていただき、ともに日本のシルクをワクワクしながら作り上げていけたらなと思います。
この記事をご覧くださった方々へ
今回のKAIKO学は約60名の方にご参加いただきありがとうございました。
今後も稲武KAIKO学を予定していますので、是非ご参加ください。
また、稲武のシルクに何か関わってみたい、新しい産業や新しい価値づくりにチャレンジしてみたい、という個人や企業の方々は、以下の古橋会の問い合わせフォームなどに、ご意見やご提案をいただければありがたいです。
次回の稲武KAIKO学(令和5年2月11日)
テーマ | シルクと共に~先人の知恵を未来へつなぐ |
日時 | 2023年2月11日(土祝) 13:30~15:30 |
会場 | 豊田市役所稲武支所 2階多目的ホール |
講師 | 【第1部】山本登美恵 様(富士凸版印刷株式会社) 【第2部】後藤裕一 様(株式会社大醐) |
アドバイザー | 山出美弥 様(名古屋大学大学院環境学研究科) |
主催 | 稲武地区養蚕・製糸文化伝承事業実行委員会 |