八事山興正寺大茶会にて小川珊鶴様の桶茶席に特別協力しました
2021年11月27日(土)28日(日)に、織田有楽斎没後400年記念事業茶美会第1回大茶会(主催:特定非営利法人 茶美会日本文化協会)が、八事山興正寺にて盛大に開催されました。
大茶会には濃茶席をはじめ4席が設けられ、私ども一般財団法人古橋会(古橋懐古館)は、小川珊鶴さんが席主を務められる桶茶席(アーティスト席)にご協力いたしました。
桶茶席(アーティスト席)
八事山興正寺の竹翠亭の想耕庵にて、花道家の小川珊鶴(おがわさんかく)さんが桶茶席(アーティスト席)をプロデュースされました。
稲武地区(現愛知県豊田市)に伝わる奥三河の民衆のお茶である「桶茶」を、日本茶インストラクターの中根めぐみさんがお点前され、お越しいただいたお客様は2日間で約320名にものぼり、大変好評をいただきました。
席主:小川珊鶴(おがわ さんかく)
(席主より)
「桶茶」とは、「塩の道」が通る愛知県奥三河から長野県南端の地域で、江戸後期から明治期にかけて嗜まれた民衆の茶です。桶の中に番茶と塩を入れてかき混ぜて泡立った茶を、漬物など茶請けとともに味わうものです。
その道具類一式が旧稲武地区にある古橋懐古館に伝わり、2017年に豊田市有形民俗文化財に指定されました。古橋懐古館の御協力により貴重な桶茶道具を特別展示するとともに、途絶えていた桶茶を再現された中根めぐみ様の点前にて、滋味深い山里のお茶をお楽しみ下さい。
小康状態にあるコロナ禍ですが、再拡大の不安は消えません。古橋家に伝わる「日露戦争備蓄米」がこの時世に問いかけるものを、室礼ともどもご覧になって、様々に感じ取って頂ければ幸いです。
小川珊鶴
1959年名古屋市生まれ。名古屋芸術大学美術学部日本画科卒業。「平成芸術花院」主宰。名古屋市民芸術祭で特別賞受賞。『家庭画報』『和楽』等の雑誌掲載や各界のアーティストとのコラボレーションなど多数。
伝統文化を継承することの意義を伝えようと国内外多方面で活躍中。2017年より稲武に移住し、「いなぶの里五節供プロジェクト」創設。世界最大の生け花そして、世界一の帯コレクションでギネス記録認定。
桶茶点前:中根めぐみ
中根めぐみ
緑茶から番茶まで幅広く日本茶の楽しみ方を提案されており、中日文化センター講座をはじめ、多方面でご活躍されています。
桶茶の習俗は100年以上前に途絶えたとされていますが、古橋懐古館に桶茶道具一式が保存されていたことから、稲武産の茶葉(稲武地区大野瀬町)を用いて、いなぶ桶茶茶温会をはじめ、地域の皆さまと桶茶の再現にご尽力されました。
桶茶は、民衆が農作業の合間や休憩時にみんなで集まって楽しんだものと考えられ、一度にたくさんのお茶が淹れられる桶が用いられたようです。少量の塩は、塩分補給にもなったようです。
泡立ったお茶はのどごしが良く、ほのかな塩分が爽快感を演出してくれます。
特別展示協力:一般財団法人古橋会(古橋懐古館) 古橋真人
泡を立ててお茶を楽しむ「振茶」は、江戸時代末期までは日本の各地に見られたようで、新潟県や富山県のバタバタ茶、島根県のぼてぼて茶、沖縄県のぶくぶく茶などが知られており、桶茶も振茶の一種と考えられます。
しかし民衆のお茶であるため、現存している道具類が少なく、古橋懐古館所蔵の桶茶道具一式はとても貴重なものになります。
日露戦争備蓄米は、日露戦争以前に石油を輸入していた一斗缶(日本に現存する最古に一斗缶とされています)の中に、玄米を密閉封入した備蓄米になります。
古橋家は、地域の豪農として領民を守るため、江戸時代から備荒貯蓄を奨励し、天保の飢饉の際には村から一人の餓死者も出しませんでした。当時の古橋家当主である古橋源六郎暉皃(てるのり)は、平成26年(2014)第187回国会の安倍首相の所信表明演説にて紹介されました。
古橋真人(一般財団法人古橋会常務理事)
稲武地区で桶茶が嗜まれ、備荒貯蓄が痛切に必要だった江戸末期に活躍した古橋家6代当主古橋源六郎暉皃は、古橋真人から数えると、曽祖父の祖父にあたります。
「大切なものを大切にして守り伝える」ということは、これだけ物質的に豊かになった現代においてもなお大変困難なことです。
私どもは、途絶えてしまいそうな大切なものを、豪農の気概によってできる限り守り伝えるべく尽力していきます。
桶茶席の室礼
- 掛軸 本阿弥光悦消息 菅沼織部定芳宛
- 床 フジイフランソワ画「世見かえりきく」
- 床 阿部肥作人形「朝拝」
稲武地区にかつて武節城という城があり、戦国時代の一時期に武田家臣の菅沼一族が治めていました。
その菅沼一族の菅沼定芳(膳所藩)と本阿弥光悦には親交があり、遠く稲武にもゆかりのある作品です。
茶請け
茶碗
・古橋懐古館所蔵の桶茶道具一式のうち拳骨茶碗写
陶芸家の伊藤勝彦さんが写されました。
伊藤勝彦さんは、織部釉による作品を中心に制作され、各地の百貨店で個展を開催されています。
現在、ギャラリー兼陶芸教室「道草」も主宰されています。
庭
赤色は魔除けの色とされ、新型コロナウイルスに翻弄される時世にあって、小川珊鶴さんによる鮮烈な表現となっています。
ご協力いただいた皆さま
古橋尚
陶芸家・郷土史家。キャプションや展示パネルを制作され、茶席ではお客様をおもてなしされました。
伊藤勝彦
陶芸家。拳骨茶碗を写していただいたほか、水屋でもご尽力いただきました。
長江惣吉
陶芸家。茶席の準備など、広範囲で助けていただきました。
水屋とは、茶室に付随する、点前や茶事のための準備をする場所です。1日に100人以上のお客様がいらっしゃるため、大変なお仕事です。
織田有楽斎没後400年記念 茶美会第1回大茶会
主催 | 特定非営利活動法人 茶美会日本文化協会 |
共催 | 茶美会大茶会実行委員会(茶美会日本文化協会、八事山興正寺など約10団体で構成) |
特別協賛 | 八事山興正寺 |
日時 | 令和3年11月27日(土)、28日(日) 9:00~15:00 |
○濃茶席(両日)
有楽流拾穂園主 長谷義隆
○薄茶席(日替わり)
11月27日 裏千家 神谷柏露軒
11月28日 宗徧流 高山宗徳
○桶茶席(アーティスト席)(両日)
花道家小川珊鶴
○立礼席(両日)
ぎゃらり壺中天茶&陶芸家たち
○和美・茶美ライブ席(午前午後2回交代上演)
11月27日 浅井りえ「箏曲千景の会」、書家浅井微芳「筆舞」
11月28日 民謡藤栄会三味線アンサンブル「PURE」、ジャズダンス三代真史「三代舞踊団」
○映像作品「OIHS KATO Wabi-Sabi PROJECT」随時上演